ダンガンロンパ感想 スーダン編
https://blog.hatena.ne.jp/nastya922/nastya922.hatenablog.com/edit?entry=820878482944029755
→前回
ということでスーダンこと『スーパーダンガンロンパ2』の感想文を書いていく。
例によっておすすめしてくれた人にしか見せる予定はないが目に入る可能性はあるのでネタバレ満載だぞという忠告だけは記しておく。
そして今回は前回とは変わって、チャプターを追いながら感想を書いていこうと思う
プロローグ
今作は最初に提示される謎や違和感がとにかく多い。
特に前作をプレイしたばかりだからこそ引っかかる要素の多さたるや。
すでにスパイクチュンソフトの掌の上なのね。
特に登場人物に謎が多かったので一旦列挙
狛枝凪斗
最初に起こしてくるやつ。声も見た目も苗木っぽすぎる。
苗木が何らかの理由でクラスに潜り込んでいるのかと思わせる存在感。
結果苗木とは何の関係もなかったわけだが、後述するがより疑わしくさせる要素もあるし同じ声優を使う徹底ぶり。
これは紛れもなく制作陣の性格の悪さの表れです。
前作をプレイした人ほど、物語が進むにつれて苗木ではなくなっていく狛枝を見ながら「苗木じゃないの…?え?でもこんだけ乖離してたら逆に苗木…?」みたいな気持ちにさせられたのだろうか。
十神白夜
でました。友達いない尖りツンデレメガネこと十神白夜。
………がめちゃくちゃ太っている。
狛枝を苗木だと思わせる原因の一つがこいつの存在。
無印との時系列の関係はよくわからないがわざわざ同じ名前で、コロシアイ経験者みたいなムーヴをしていて混乱が止まらない。
本物の十神だとしたら無印からどのくらいの時間が経っているのか、パラレルワールドかなんかなのか…。
こいつが十神白夜のなんなのかが曖昧である限り舞台の世界観そのものの謎に迫れなくなっていて、登場人物1つでもプレイヤーの視点をずらしにずらすことが出来るのだと感心した。
ここまでメタに切り込んでくるゲームもそうないぜ。
ウサミ
モノクマよろしく、長年愛されるアニメのマスコット的存在のキャラクターの声優を務めている人が声を当てている時点でなんだこいつとなる。またもや声優からミスリードを仕掛けてくるパターンだ。
モノクマと同じなのはぬいぐるみのなりで人工知能的なムーブをするところにもある。
『希望ヶ峰学園の修学旅行』と銘打っている割にはモノクマと同じシステムのやつを引率にしているし、何かたくらみがあるように見えても仕方ない。
しかしながら彼女は終始味方のような動きをする。
とは気づいているものの僕らはスパイクチュンソフトをなにも信用していないので、敵の可能性も捨てきれない。
怪しいのに怪しくないのがウサミもといモノミなのだ。
それにしてもだが、モノクマやウサミ(モノミ)のように我々が慣れ親しんでいる声でふざけた茶番をしたりどっちつかずな行動をされると他の作品の悪役に対して感じるストレスとはまた別ベクトルのストレスを感じることが出来てなんかすごい。
よりにもよって声優さんたちはドラえもんやタラちゃんに寄せた演技をするもんだからなおさら。
このフォーマットは革命だな。
らーぶ。らーぶ。
日向創
諸悪の根源
今までごちゃごちゃ言ってたけどそもそも、主人公の才能が不明なことが俺たちの推理をややこしくさせている。
無印感想でも書いたけど、ダンガンロンパはヒューマンドラマなので主人公が何らかの理由で才能がない状態だというのは人と人との関わりの中でたくさんのドラマを生むだろう。
そこが前作とは大きく違うところであり、主人公の存在というか立場が物語の中の謎の中心なのだ。
蓋を開けてみたら「思いだせない」ではなく「もともとなかった」奴だし、「なかった奴」だと思ったらなんやかんやいっちゃん才能のあるやつだったというね。
カムクライズルの件に関しては正直もっと掘ってほしかった。
まあ、ダンガンロンパという作品全体の傾向として外の世界については凄くぼんやりさせてプレイヤーの解釈の余地を残させている感じはあるから、カムクライズルのキャラクターをしっかりさせすぎると世界観が崩れてしまうんだろうなという気はしている。
苗木はヒロイックで日向は実はラスボスみたいな。
やっぱりミステリーとは思えないジャンプ的な脚本。いいね。
プロローグの謎を書いていたはずなのに気づいたら結末あたりの感想まで書いてしまっていた。
パッションで書いている部分もあるので許してほしい。
とにかく謎と違和感だらけで始まる今作は、僕の記憶に深く印象を刻み込ませるものだった。
3作品の中で僕はこれが一番好きだった。とこの時点で言っておこう。
列挙だけのつもりだったが思ったより書いちゃったのでチャプターごとのやつに言っちゃいます。ヨロヨロ~。
チャプター1 ~絶望トロピカル~
被害者:十神白夜 クロ:花村輝々
謎に近い人物殺されがち。
前作とは違いチュートリアル感のない事件であった。
最初っからエンジンふかしてる。
とはいえ、コロシアイゲームの舞台をきっちり整えるための事件だったという点ではチュートリアルだったのかなと思う。
まず狛枝のヤバさね。俺は日向とかいう何もないやつを優しく導いてくれる苗木だと思ってたのに見たことない狂い方してた。
もっかいプレイしてこいつの心理をしっかり分析したくらいには気持ち悪い。
俺はプランターにやさしい緒方恵美を植えたはずなのになんかすでに枯れてる芽が出てきた気分。ふざけんな。
あと十神の退場ね。
改心したのかなんかで張り切ってたおデブちゃん真っ先に死んでワロタとは思ってしまいましたすんませんほんと。
スパイクチュンソフト「前作から来たと思ってたやつみんないなくなっちゃったねwwww」
っていう声が聞こえた。
そういえば今作のお仕置きはショッキングなやつあんまないよね。スーダンだけレーティングがCなのはそういうことなのかな。
チャプター2 ~海と罰。罪とココナッツ。~
被害者:小泉真昼 クロ:辺古山ペコ
ダンロンの使用上、理論的に矛盾を考えればなにもわからなくても大体答えに導いてくれるわけだが、この事件はそのシステムがなかったらほんとうに解かせる気がないだろう複雑かつ巧妙なトリックで素晴らしかった。
ペコちゃんに感謝m(_ _"m)ペコ
………ってね!!!!!!!!!!!
はい、メタ的に見たときに怪しすぎる奴が多すぎたので逆に実質全然容疑者が居ないパターン。
前作で言う、さくらちゃんの回と似たような構造だが今回は生き残ってる生徒が多いから誰がやったのかわかりにくいったらありゃしない。
本当になにもわからなかったので、見事な推理を見せるゲーム内の生徒たちに「お前ら頭いいな!?」と感心してしまうほどだった。
なによりすごかったのはペコちゃんの最後の演説。
「自分は命令を聞くだけで意志などないわけだからこの事件のクロは私ではなく、指令を下した九頭龍である」という大立ち回り。
これにはしびれた。
コロシアイゲームのルールは無印とほとんど変わっていないのにもかかわらずこの学級裁判の展開の引き出しの多さには平伏するしかない。
お仕置きもなんだか感動的だった。
動機も含めてなんというか青春が詰まっている。人が死んでるけど。
この場合の青春は間違いなく「甘酸っぱい」ではないんだろうが間違いなく青春であった。
人が死んでるけど。
チャプター3 ~磯の香りのデッドエンド~
被害者:澪田唯吹 西園寺日寄子 クロ:罪木蜜柑
この事件のトリックも複雑かつ巧妙。
学級裁判パートが前半と後半で分かれているのからわかる通り、前作と比べてトリックが複雑なのは間違いないが、実行犯に複雑にできるそれなりの理由があるのがいいなとこの事件が終わった時に思った。
なにより悲しいのが推しだった澪田が死んだことだ。
俺は高を括ってたんだ。あのキャラは死なないだろうと。
そしたらなんだ?絶望病とかいうよくわからんキャラチェンジをさせられかつての澪田をしばらく見れないままのお別れとなった。
まだパンツもらってないのに!!!!!!!!!!!!!!!!
そんなことに気を取られてはいたが、何気に罪木の言動が世界の謎を解くまあまあ大きなカギとなるようなものであったのはこの章のポイントだろう。
罪木もキャラ的に犯人ではないのかなあと思っていたから、総じて意外な事件だった。
ちなみに罪木のパンツも狙っていた。
どうして…………
チャプター4 ~超高校級のロボは時計仕掛けの夢を見るか?~
被害者:弐大猫丸 クロ:田中眼蛇夢
うおおミステリーファンが大好きな建造物トリック!
を織り交ぜながらファイナルデッドルームからわかるこの世界についての謎を説き明かしていくパート。
そしてチャプター5への伏線。
世界観の味変をしつつしっかり物語は進む脚本力に脱帽ですね。
とはいえ事件の大筋はドッキリハウスの謎が主であり、謎解きパート自体の歯ごたえは控えめ。学級裁判の途中にでもドッキリハウスのトリックさえわかってしまえば、学級裁判内で繰り広げられる推理の時間はどうしても退屈なものになってしまうからね。
僕はこのチャプターを物語を進める中で”味変”に重きを置いたものだと認識してた。
なぜなら動機付けが、「極限状態にしてコロシアイを起こす」というものだったからだ。
極限状態での心理的な変化は当然のように起こる。コロシアイゲームもいうなれば極限ではあるが、餓死を目前とすると話は別だ。
タイムリミットがあるかつ、空腹で思考がまともじゃない状態で起こす殺人にはドラマは生まれないと思っていた。
しかし、考えてみるとさくらちゃんの銅像が象徴しているようにチャプター4のテーマは”自己犠牲”であり自分の命を顧みずに生きようとそして最悪でもみんなを生かそうとして弐大に立ち向かった田中のキャラクターの良さが良く出ているチャプターだった。
田中の行動は、スーダンはダンロン作品群の中でも特に”学園要素”に重きを置いていて青春が強調されているのだと作品全体の味方にひとつ視点を増やしてくれるものだった。
チャプター5 ~君は絶望という名の希望に微笑む~
被害者:狛枝凪斗 クロ:七海千秋
この事件がスーダンを傑作とさせたと言っても過言ではない。
今までの事件とは明らかに毛色の違う単なる狛枝の暴走。歪んだ「希望」への愛が産んだ絶望の復讐。狛枝の動機はなに一つ理解できない。
今回のトリックは”運”。
ダンガンロンパは学級裁判によって論理的に犯人を明らかにしお仕置きに導くことがプレイヤーが感じるカタルシスの根源だったはずだ。
しかしどうだこのチャプターは事実上犯人を見つけることはできない。
最後に残されたのは狛枝の”運”の一点。
…………
この事件の感想はなにを書いても薄っぺらくなってしまうのであえてあんまり書かない。
その衝撃と絶望感を文の少なさで伝えられたらなと思う。
あきらめたわけじゃないよ。ほんとだよ。
ほんとだよ。
チャプター6 ~修学旅行へと向かう乗り物の中のような~
このチャプターというか今作全体のポイントが明らかになる。
生き残った生徒たちはこのコロシアイゲームから生還したところで、元の世界での自分は今よりもっと悪い状態だということだ。
つまり、戻らない方が幸せである可能性が高いということ。
無印は世界全体が絶望に包まれている状態で主人公たちの決意は生還しようが学園の中に居ようが変わらないものだったのに対し、スーダンは生徒たちの意志はいくらでも書き換えが可能。
どの”自分”を選ぶのかという自我との闘い。
楽園で楽しい生活をするハッピーエンドか、必ずしも幸せとは限らずもしかしたらつらい現実が襲ってくるかもしれないトゥルーエンドか。
本当の幸せとは、自分とはなにか。
最後にゲームから問いかけられるのはあまりにも哲学だ。
ダンガンロンパの物語は基本的に一本の道しかないが、日向たちが別の未来を選んだ場合も想像したくなるようなエンド。
余白にしては大きすぎるが、ダンガンロンパのストーリーは曖昧だからこそ出る味があるのだ。
読後感は決してすっきりするものではないが、余韻がすさまじい。
チャプター5の冒頭でも書いたが
「スーパーダンガンロンパ2は傑作である」と率直に思った。
以上
V3感想へ続く